まず、明海大学ESS Dolphinsが肯定側に立った試合で最も印象に残った否定側のチームは、上智大学でした。それは上智大学が春の二人制ディベートで優勝し、JNDT(Japan National Debate Tournament)関東予選をぶっちぎりの点数で全勝突破したことが、Dolphinsの闘争心を喚起したからです。
Dolphinsはトリッキーな新しいケースでシーズンを乗り切るということはあまりありません。基本的にモデルにある最もスタンダードなケースを用います。しかしモデルをそのまま出したのでは、勝てるわけがありませんから、必ず他のどの大学も気付いていなくて自分だけが気付いている強い分析(Analysis)を最低一つは入れてそこを軸に立論を構築していくようにしています。
さらに、今期の論題の下では、「無国籍児童」というとてもマイナスの議論(デメリット)が付きにくいケースがスタンダードなものとして出回っていたので、さらに否定側からのマイナスの議論も付きにくいようにという点に苦慮して立論のプレパレーションを進めていました。実際、全試合を通じてマイナスの議論を決定的につけられた試合は無いので、立論におけるプレパレーションは取り敢えず、成功したと思います。
ですから、上智大学との試合が最も印象に残ったのは、相手の素晴らしいスピーチ力でした。上智大学の斉藤さん、森さんがよどみの無いスピーチでぽんぽんと論点を出していくため、精神的なプレッシャーを感じたものです。優勝はしたものの、明海大学は個人賞を逃していることからもわかるように、反駁におけるプレパーションにおいて後期へ向け課題を残しているなと実感させられた試合でした。
Dolphinsが否定側に立った試合で最も印象に残ったのは大阪府立大学による中国残留孤児という新しいケースでした。前日にベスト12(JNDT本選の第1回戦。上位4チームはシードになる)の試合を観戦していた時は、勝利への糸口が全く見つからず呆然としたものです。実際、一番勝つのが難しく、負けているとしたらこの試合だったかなというのが、この大阪府立大学戦です。
この際はDolphinsのメンバーはもとより、引退してまで強力にこの日のプレパレーションのリーダシップを発揮してくれた白石さん(明海大学)、多くの助言と協力を頂いた筑波大学の三島さん、涌沢君、松本さん、一橋大学ISの高瀬さんに感謝しています。パートーナーである高橋剛弘と組むのは実に1年ぶりでしたので1試合勝ち進むごとにわくわくしたものでした。貴重な体験を持てて幸せです。
(すだ ゆうすけ)
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