2002年5月26日,早稲田大学Debate&Discussion(WDD)は二部門制のディベート大会を開催しました。
日本語の大学ディベートコミュニティでは,多くの大会は全日本ディベート連盟(CoDA)や日本ディベート協会(JDA)によって開催されており,大学のサークルが大会を主催することは一般的ではありません。本稿では,サークルが単独で大会運営をすることで感じた視点を、ご報告したいと思います。
感想の中心になるのはただ一つ,「これからはボトムアップの大会を増やしたい」ということです。これを言い換えれば,今までのように上からの視点で大会を開くのではなく,小さなものでもいいから自発的に発生した,草の根の大会を増やしていく必要があるのではないか,ということになります。
そもそも本大会の起こりは「試合の機会がもっと欲しい!」という,二,三年生の声でした。WDDでは毎週三回の活動を行っており,試合の機会は少なくありません。しかし,やはりサークル内だけではなく,他のサークルのディベーターとも議論をしたいというニーズは切実なもので,いっそ自分たちで開いてしまおうということになりました。
翻ってみれば,ディベートの精神は「学びあい」にあります。自分一人で何もかも正解にたどりつくことができるなら良いのですが,十人十色の個性をもっている私たちは生来の限界を持っており,他の人と意見を交換することによって,自分を伸ばしていくことができます。
こうした「学びあい」がディベートの特徴だとすれば,ディベーターが「より多くの人と試合をしたい」と考えたのは,自然なことだといえるでしょう。
かくしてそもそも大会は上から与えられるものではなく,自分達のニーズに基いて、草の根で作っていくものではないか,との感想に辿りつくのです。もちろん現在の大会も全て,こうした草の根の活動から生まれたものなのですが,その趣旨を思い出しながら,また自分たちで更に機会を作りつづけるように,我々も考え方を変える必要があるのではないかと思うのです。
幸いにして全日本ディベート連盟の団体会員制度,大会開催支援プログラム,ポイントプログラムなど,こうした「草の根の大会」を支援する環境も整いつつあります。今まで練習試合として開催していたものでも,少し趣を変えて大会にしてみませんか。ほんの数チームの参加でも,それが自分たちにとって必要なものであるならば,堂々と大会を名乗ろうではありませんか。
そうして実感に根ざした,草の根のディベートが広がっていくことこそが,日本のディベート界に必要なことの一つであるように思います。
(やまなか まさし)
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