1 はじめに
2001年度のNAFA(全日本英語討論協会)関東局副会長および新規開拓専務理事をしていた、富澤晶子と申します。この記事では、2001年のNAFA新規開拓業務について振り返ると共に、新規開拓の難しさや課題などについて記したいと思います。
2 新規開拓専務理事を志望したのは
英語ディベート界では、ディベート人口の減少や、ディベート大会の参加数やディベート・サークルの減少が起こっており、活気や多様性が減ってきています。私は、自分が楽しませてもらったディベートなので次の人たちにもなるべく同じ環境を残して楽しんでもらいたい、また、そのようなディベートをより多くの人に知って楽しんでもらいたいと思いました。そのために、ディベート人口の維持・拡大を図るという新規開拓業務に魅力を感じました。
新規開拓専務理事は、昨今のディベート人口の減少を受け、2000年度よりNAFAの専務理事のポストとして、スクアッド(ディベート・サークル)支援専務理事と新規開拓理事が設けられました。二つのポストは違う役割があります。スクアッド支援専務理事は既存のスクアッドの消失を防ぐこと、新規開拓専務理事は市場を開拓してディベート人口の維持・拡大に努めることが主な役割です。既存のディベート・サークルの存続を助ける方が即効性や成功率が高そうですが、私としては、新しいマーケットを開拓していくという新規開拓に挑戦してみたいと思いました。そこで2001年度にこのポストを選んだ私は、2代目の新規開拓専務理事として1年間を過ごしました。
3 企画作り
まずはNAFAの理事全体で新規開拓の目標を定めました。セミナーなどに参加してもらった結果、ディベート大会に参加してもらい、その後ディベートを続けてもらえるようにすることを最終目標とし、そのための企画を行うことを考えました。
前年度かつ初代新規開拓担当の方が企画されたイベントには、5月のフレッシュマンディベートセミナー(対象はNAFA加盟校の1年生)と11月の全日本ディベート連盟(CoDA)との共催セミナー(Debate Conference for New Generation: [JDA:7092,7125]に詳しい)がありました。
私の代では、まずは5月のセミナーを踏襲すると共に、せっかくのチャンスなので、それとは違った形の企画ももう一つしてみたいと思い、NAFA顧問理事の方々のご意見を伺いながら議論を重ねました。
新しい企画としては、「ディベート学校」案が最もホットだったと思われます。これは、主にNAFAの理事を講師として、定期的に、ディベートを知らない人たちにディベートを知ってもらうためのレクチャーを開くもので、東北大学をはじめとした既存ディベート・サークルの新勧方法を真似たものでした。この案は、レクチャーに参加してもらった人がディベーターになってくれる確率は高そうですが、レクチャーの対象者が不明確なこと、宣伝方法、場所、コミ(委員)の負担の大きさなどの問題があることから、保留になりました。
このように模索しているうちに5月になり、5月のセミナーが開催されました。セミナーには約50名の参加者が得られ、ある程度の反響は得られましたが、前年度と同じようにNAFA加盟団体が対象だったため、その効果は新歓(新入生歓迎行事)の助けにとどまりました。これでは新しいマーケットを開拓することにはならず、一つの企画が無事終ったものの、新規開拓の目標に沿った企画は達成できませんでした。
4 KUELとの共催
せっかく就任した新規開拓理事としての職務もまっとうできそうにないまま、夏が過ぎ、9月に入り、SIDT(上智杯)が開催される時期になってしまいました。やる気満々で新規開拓理事を志望した自分って何だったのだろう…と思っていた頃、KUEL(関東学生英語会連盟)と共催でディベートセミナーを開くことが決定しました。
幸運だと思いました。NAFA加盟校ではない人たちにセミナーに来てもらうには、他団体の方と共催してもらってそこで勧誘してもらうことが、とてもいいからです。とりわけKUELの加盟団体は既に英語に興味を持っている人たちの集まりですし、当時のKUELコミ(委員)の方達もディベートには関心を示してくれていました。私達は、与えられた機会に感謝し、とにかくまずセミナーを開いてみて、そこで出来るだけ沢山の人にディベートを紹介し、興味を持ってもらうことにしました。また、セミナー後は、興味を持ってくれた人たちに、秋の大会などを見に来てもらい、もっとディベートに触れてもらおうと思いました。
セミナーは、まずKUELと相談して両者に都合のいい日程を決めるところから始まりました。幸い、両方でイベントがない日が1日だけあったので、その日にしました。またその日は土曜日だったため、講義の後に参加してもらえるように、午後からの開催にしました。KUELが広報や会場の確保を担当、NAFAが講座やモデルディベートなどの中身を担当、というように仕事を分担しました。参加費については、セミナー開催にかかる費用をNAFAとKUELで半分ずつ負担することにより、無料にすることができました。以下は、KUELが加盟校に配布してくれたインビテーションの抜粋です。
NAFA・KUEL共催 ディベートセミナー
日 時 :10月20日(土曜日)14:00〜18:00
場 所 :明治大学リバティータワー(お茶の水)
参加費 :無料
対象者 :アカデミックディベートに興味ある初心者。また、未経験者。
内 容 :
1.「〜イントロダクション〜ディベート、なんて…」神田晴彦
2.「ディベート手法の紹介」徳田俊介
3.モデルディベート"Resolved; that the Japanese government should prohibit the production, import, and sale of any and all cigarettes."
石井大輔、神田晴彦、小滝藍、竹田さやか
ディベートを知らなかった人たちに集まってもらう好機会をディベート人口増大に活かせるよう、セミナー会場で、口頭とパンフレットによる『NAFAセミナー入門者用セット(過去のNAFAセミナーのテープ・レジュメ・有料)』と『派遣インストラクター制度(ピースコ)』の販売・紹介をしました。また、セミナー後に参加者にコンタクトを取り、秋の大会の見学ツアーなども考えていました。
セミナーの日程が決まったのがとても遅かったため、告知期間が短く、人を集めるのが難しかったです。開催の直前には、電話で他団体の知人やNAFA加盟校の人に直接連絡を取る形になりました。また、レジュメ・モデルの準備などもとても忙しく、ハードスケジュールの中で講師やmodel debaterとして協力していただいた方々に深く感謝しています。
5 NAFA・KUEL共催セミナーの結果および反省点
NAFA・KUELセミナーは、30人の参加者にディベートを楽しんでもらい、終了することができました。以下に、そこでのアンケートの結果を載せますので、ご覧ください。
アンケート結果
1.所属大学、学年
KDS1年 5人
KDS2年
日大2年
東京女子2年 2人
白百合1年 2人
MESA1年 3人
杏林3年
昭和4年
北里1年
横国1年 2人
(回答者19人;参加者 30人)
2.セミナーをどのように知ったか
チーフから聞いた 11人
部長から 2人(白百合)
KAEDEの会場で 2人(MESA)
JIMSA 2人(杏林、北里)
NAFA会長から 1人 (昭和)
3.レクチャー@の感想 良かった;15人 普通;3人 見ていない(遅刻);2人
4.レクチャーAの感想 良かった;12人 普通;5人 悪かった;2人
「レジュメを図にして欲しいと思った」
5.モデルディベートの感想 良かった;16人 普通;3人
「とても分かりやすく良かったのですが、今期のresolutionでやって欲しかった」
6.全体的な印象 良かった;18人 普通;1人
7.今後も同じような企画は必要だと思いますか? 思う;17人 思わない;2人
理由:
「一年生にとって必要。もっと早い時期にもやって欲しいです。4,5月とか。」
「とてもタメになった。こうなりたいと思わせてくれた。」
「ディベートってものが世の中にあるんだって一般ピープルに分かるから。」
「1回1回来る人は少なくても沢山積み重ねて、沢山の人がディベートに興味を持ってくれればいいですよね。」
「今までのモデルの中で最も教育効果があったと思うから。でも開催時期変えるべきかも。」
「ディベート初めての人にはすごく分かりやすかったと思う。モデル良かったし。」
「今後のやる気につながるから。」
「今回来られないメンバーがいたので。」
「今まで知らなかったディベートを知れました。良かったです。」
「本格的な講義だったから。」
「いいモデルディベートを聞くのは大変ためになるから。」
NAFA・KUELセミナーの最大の反省点は、せっかくのセミナーという機会を、その後にディベート人口を増やすところにまで活かすことができなかったことです。
開催に前考えていた秋の大会の見学ツアーも、誘うタイミングを逃してしまい不発に終わりました。また、たとえ大会見学ツアーが行えたとしても、セミナーで始めてディベートを知ってくれたような環境の人に、そこからどうしたら、一般的なディベート大会に出場するようになってもらえるか、きちんとした方法を考えられていませんでした。これは、セミナー開催前の準備不足だと思います。そして、NAFAが今後様々なフレッシュマンセミナーを開くことの目的が、もしも変わらずに「ディベーターではなかった人に、ディベーターになってもらうこと」だとしたら、これは今後の大きな課題だと思います。
6 終わりに
セミナーを開くのは、大変です。沢山の人の力が必要ですし、手間もかかりますし、参加費を補助するとお金もかかります。もちろん、色々な人にセミナーを聞いてもらうことは開催する者として充分嬉しいです。ですが、それでは一向に新規開拓の目的は達成できません。新規開拓を実現するために、今後はセミナーを1つの柱とし、ゆくゆくはセミナー受講者がディベート大会に出場してくれるようなシステムを考えていかなければならないと思います。
(とみざわあきこ)
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